建物の塗装は、それ自体がただ美しい外観を提供するだけではなく、家を保護するための重要な防衛ラインでもあります。

しかし、どの塗料を選び、どのタイミングで塗装するかは、経年変化を十分に考慮した上で計画することが大切です。

今回は、そのような塗装計画を立てる際に何を考え、何を準備すべきかについて考察してみましょう。

経年変化を理解する

経年変化とは何か。これは物質が時間の経過とともに劣化したり、変質したりする現象を指します。

家の塗装においても、時間の経過とともに色あせたり、ヒビが入ったりするなど、徐々に変化していきます。

しかし、その変化の度合いや速さは、使用する塗料や気候、環境などさまざまな要素によって異なります。

色あせは紫外線や大気中の酸化物によって引き起こされます。そのため、特に日当たりの良い場所や交通量の多い道路沿いの家では、色あせが早く見られることがあります。

また、塗料がヒビ割れる原因は主に乾燥や湿度の変化によるものです。

急な温度変化や湿度変化によって、塗料が収縮したり膨張したりすると、ヒビが生じやすくなります。

そのため、四季の変化が激しい地域や日中と夜間の温度差が大きい地域では、特にこの問題に注意が必要です。

塗装計画の立案

塗装計画を立てるにあたり、まず考慮すべきは、現在の塗装の状態です。

色あせやヒビ、剥がれなどが見られる場合、すでに塗り替えの時期が来ている可能性があります。また、素材の劣化や亀裂が見られる場合は、より早急に塗り替えが必要かもしれません。

次に考慮するべきは、家の位置や周囲の環境です。

例えば、海沿いの家や雪国の家では、塩害や雪害などから家を守るために特別な塗料を選ぶ必要があります。また、木々に囲まれた家では、藻やカビが発生しやすいため、抗菌・抗藻性のある塗料が適しています。

周囲の環境だけでなく、建物自体の特性も考慮すべきです。

例えば、木造の建物と鉄筋コンクリートの建築物では、劣化の進み方や必要な塗料が異なります。木造の建物は乾燥に弱く、鉄筋コンクリートの建物は錆びやすいといった、それぞれの建物の特性を理解しておくことが大切です。

塗装の種類と特性

様々な種類の塗料があり、それぞれに特性や適用するべきシーンがあります。

例えば、シリコン樹脂塗料は耐候性が高く、劣化しにくいため長持ちします。一方、ウレタン樹脂塗料は塗膜が硬くなりにくく、長期間にわたって美観を保つことができます。

フッ素樹脂塗料は、耐汚染性が高く、カビや藻の発生を抑える効果があります。そのため、湿度が高く、カビや藻が発生しやすい環境には適しています。また、無機系の塗料は耐熱性や耐酸性が高く、特に厳しい環境下での使用に向いています。

これらの塗料の特性を理解し、家の環境や状態に応じて適切な塗料を選ぶことが重要です。また、色選びも重要なポイントです。色によっては日射熱を吸収しやすくなり、劣化が進む可能性があります。明るい色は反射率が高く、暗い色は吸収率が高いという特性を理解し、適切な色を選ぶことも大切です。

塗装の選定と準備

塗装を始める前に、適切な準備を行うことが重要です。

まず、塗装する面積を正確に測り、どのくらいの塗料が必要かを計算します。

一般的な計算方法は、塗装面積(平方メートル)に塗料の塗布量(リットル/平方メートル)を掛けることで得られます。ただし、塗布量は塗料の種類やメーカーによって異なるのはもちろん、塗装を施す素材や状況や、気候や温度変化など様々な要因で異なって来るので注意が必要です。

また、一般的にはあまり知られていませんが、塗装の前には下地処理を行うことが非常に重要です。 この下地処理を怠ると塗料がしっかりと定着せず、早期に剥がれてしまったり、本来の機能や性能を発揮できない可能性があります。

下地処理とは、古い塗料や汚れを取り除いたり、素地を修復したりすることを指します。特に、剥がれやすい箇所は下地材を塗布するなどして補強する処理が必要なケースもあります。

さらに、塗装工事が開始されると塗装時の天候も重要です。

雨天や強風の日には塗装を避け、低温や高湿度の環境も塗料の乾燥を阻害するため望ましくありません。塗料や状況などにもよりますが、一般的には塗装の環境としては晴れた日の気温20~25℃、湿度50~70%が最も適しているとされています。

適切な塗装タイミング

経年変化を考慮した塗装計画を立てる際には、塗装のタイミングも非常に重要です。

一般的に、外壁塗装は約7~10年ごとに行うと言われていますが、これはあくまで目安であり、家の状況や使用する塗料、気候などにより変動します。

なので、定期的に外壁をチェックし、色褪せやひび割れ、塗膜の剥がれなどのサインを見逃さないことが重要です。

経年変化に対応した塗装

経年変化した建物の外壁や屋根などの塗装をする際は、新築とは異なり塗装するための前提条件や状況が必ずしも良いとは言えないため、塗装計画を立てるのも含めて、その実行には必ずといっていいほどプロの力が必要です。

しかし、塗装業者の選び方は一筋縄ではいきません。料金、技術力、対応力、信頼性など、様々な要素を考慮する必要があります。

まず、見積もりを取る際には、どのような作業が含まれているのか、詳細な内訳を確認しましょう。

安価な見積もりでも、必要な作業が省かれている場合があります。また、高額な見積もりでも、その価格に見合った価値があるのかを確認することが重要です。

次に、業者の技術力や経験値を確認します。塗装は一見簡単そうに見えますが、実は高度な技術と知識や経験を要求される作業です。

特に、下地処理や細部の仕上げなど、見えない部分の作業ほど品質を左右すると言っても過言ではありません。

そのため、塗装工事の実績や経験、技術力などをチェックして、業者の信頼性を確認しましょう。

また、塗装業者の対応力や信頼性はとくに重要な要素です。

塗装工事は長期間にわたることが多く、実際に塗装工事が始まった後に変化した状況に対応する必要がでてきたり、その間、業者とのコミュニケーションが必要となることもあります。

このため、どんなに優れた技術力を持っていたとしても、どんなに優れた塗料を使用したとしても、対応力と信頼性が欠落していては良い成果は得られません。 業者がきちんと説明をしてくれ、納得のいく対応をしてくれるかどうかなども含め、最終的には、信頼できるかどうかを自分の目で確認し、納得できる業者に依頼するようにしましょう。